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エネルギーギャップ:私たちの
世界は、より多くのエネルギー
を必要としています。

私たちの世界は、より多くのエネルギーを必要としています。世界エネルギー会議(WEC)は、2060年、エネルギー需要は2015年に比べ150%近くも増大すると予測しています。再生可能エネルギーでカバーできるのは、そのうち最大でも4~6割に過ぎません。残る4~6割は依然として化石燃料で賄う必要があります。

太陽のイメージ

このエネルギーギャップ問題へのソリューションとなりうるのが、核融合エネルギーです。星が持つ、ほぼ無限のエネルギーを地球にもたらすという夢が現在、再びかたちになろうとしています。特に有望視されているのが、レーザー融合です。ヘレウスコナミックは 高エネルギーレーザー用の石英ガラス を提供しています。

核融合について初めて科学的な考察がなされたのは、およそ100年前。そして1980年代以降、実験施設が稼働しています。しかし問題の複雑さゆえに、これまでの研究の進捗は遅々としています。核融合とは、太陽のようなエネルギー生成プロセスを地球上で実現することにほかなりません。実現すれば、人類は環境にほとんど影響を及ぼさず、かつ温室効果ガスや放射性廃棄物を出さない、実質的に無限のエネルギー源を手にすることになります。

エネルギーギャップ:既存の再生可能エネルギー資源では、エネルギー目標は達成不可能

核融合のしくみとは

核融合炉は、核融合反応時に起こる熱を利用して発電します。核融合プロセスでは、2種類の軽い原子核を融合させて重い原子核を形成し、エネルギーを発生させます。核融合においては、人間や環境には無害な貴ガスであるヘリウムと、高エネルギー中性子が生成されます。

核融合を開始させる物質は水素同位体である重水素と三重水素(トリチウム)です。これらは海水や排水など、普通の水から得られます。核融合プロセスで得られる高エネルギー中性子が生成する水蒸気によってタービンを回し、それによって発電機を駆動させ、電気を生み出すのです。

レーザー融合のしくみとは

地球上の発電所で核融合反応を引き起こす。これは科学者や専門家にとって大きな挑戦です。なぜなら、核融合プロセスを成功させるには、原子核の持つ強い静電反発力を克服せねばならないからです。研究者は現在、核融合エネルギーを発生させるために2つのアプローチを取っています。すなわち、強力なレーザーを用いた核融合と、磁場を用いた核融合です。

そしてこのほど、レーザー融合には大きな進捗がありました。2021年8月、カリフォルニア州  ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL) にある国立点火施設(NIF)が、レーザー融合により1.3メガジュールのエネルギーを発生させる反応を引き起こすことに成功しました。

A technician adjusts an optic inside the preamplifier support structure
プリアンプ支持構造 - 技術者がプリアンプ支持構造内部の光学系を調整する様子(画像出典:https://lasers.llnl.gov/)

NIFは世界で最も強力なレーザー設備を備えています。この施設はサッカーコートおよそ3面分の広さですが、にもかかわらずレーザーパルスは最終的に炉内の金メッキされた小さな空洞の内側に当たらなければなりません。この空洞には、重水素と三重水素が入った2mmのプラスチックカプセルが入っています。レーザーが発生する、金と正確に合致する波長352ナノメートルの紫外線の光が、ガンマ線を放出してカプセルを爆縮させ、融合反応を引き起こします。

NIF’s two identical laser bays
NIFのレーザー室 - 上から見ると、NIFの2つのレーザー室には、室内中央を走るユーティリティースパインの両側に、48本のビームラインが2つずつ並んでいるのがわかる (画像出典:https://lasers.llnl.gov/)

私たちの貢献:高エネルギーレーザー用の高純度石英ガラス

レーザー融合には、192本のレーザービームを操る高精度の光学部品が必須です。それには高純度で、優れた光学特性を持つ物質が必要です。  石英ガラス はその性質に加え、要求される高い透過率と、UV光スペクトルにおける低吸収率を備えています。

ヘレウスコナミックのセールスオプティクスグローバル責任者、フランク・ニュルンベルク博士は、「レーザーシステム用石英ガラス材料を通じて、私たちは、全く新しい持続可能なクリーンエネルギーの生成に大きく貢献しており、再生可能エネルギーにおけるエネルギー供給ギャップの問題を解消することができます」と説明しています。

高エネルギーレーザーが融合反応を起こす力に

ヘレウスは、NIFをはじめとするヨーロッパ、米国、中国の研究施設にレーザー光学部品用の石英ガラスを提供しています。その有望な結果により、核融合エネルギーを商業化しようとするスタートアップ企業が数多く産まれています。ドイツでは、ヘレウスは、ダルムシュタットの気候技術系企業Focused Energy社をはじめとするスタートアップ企業とともに、今後数年後の最初のプロトタイプの実現に協力しており、試作品の実現に遅くとも2040年までに世界初のレーザーベースの商用核融合発電所を稼働させる予定です。そこに至るまでには、核融合炉の微調整を続けていかねばなりません。ニュルンベルク博士によると、特に問題となっているのが効率です。「エネルギー生成効率は、電気という形でシステムに必要なエネルギーと、核融合によって生成され電気に変換されたエネルギーの比率を表します。もし科学者がこの効率を最大限に高めることができれば、レーザー核融合はエネルギーギャップを埋める、あるいは他のエネルギー源に取って代わる非常に大きな可能性を持つことになります。」核融合研究の今後20年は、興味深いものとなる見込みです。

石英ガラスを活用した光学部品で、レーザーの性能を向上